参院選自公圧勝!アベノミクスが加速 「データヘルス計画」の作成と実行を支援します


今回、アベノミクスの成長戦略の1つとして提示された「データヘルス計画(仮称)」のスケジュールを見ると、2014年からは全ての健保に「データヘルス計画(仮称)の作成・実施を求める」ようになっている。
しかし、健保の現場を13年間廻ってきたものとして「現場にはまだ、課題解決を目的に必要データを抽出し、加工して可視化する考え方とスキルを持った人材がいない」と言わざるを得ない。
これは、最新ソフトを導入したPCを渡されても、使いこなせないのに似ている。また、基幹システムにはそれなりの解析ソフトが入っているにも関わらず、活用しきれていない健保が多いのも事実である。
PCのソフトも昔は専門家以外は使いこなすことができなかったが、今では説明書がないソフト(使う人間の思考に沿った思想でソフトが作られている)や、3日もスクールに通えばある程度使いこなせるわかり易いソフトに変わってきた。
もしかするとこれまでの基幹システムは、今日のように健保スタッフがフルにレセプトを分析して、課題を可視化し、重症化しそうな対象者を経年でトレースすることを想像していなかったのかもしれない。
時代が変わった今、エクセルを使いこなすように、レセデータも、健診データも容易に可視化することが可能である。理由はPCのスペックの向上とソフトの進歩である。従って、データさえ取り出せれば、自健保の課題が何かは容易に可視化できる。
それよりも大きな障害は、明確になった課題を①誰が、②いつ、③どんな方法で、いくらの予算をかけて行い、④その結果はどうだったのかを評価し、⑤より効果的で効率的な方法にリプランニングしてPDCAのサイクルを回すことである。
思い出すのは童話「ねずみの相談」である。議論して出した結論は「猫の首に鈴をつければいい!」、その通りである。では誰が猫の首に鈴を付けに行くのか?というテーマになると、皆がハタと黙ってしまうという、あれである。
課題を解決して成果を得るには、いくばくかの勇気と複数の行動が必要である。しかし、これらの行動が全て行われ、完結しない限り(中途半端で)は成果は「なし」となる。
まさに「行動なしは成果なし」である。
私がこれまでにレセデータ・健診データ・問診・アンケート等を重層的に解析し、それに連動する解決策を多々提案した経験から、ある集団が持つ課題や発症リスクが高い方を明確にするよりも、それを解決するための事前アナウンスやキーパーソンに対する根回しや、そのメッセージを伝えるための言葉選びの方がはるかに難しいと感じる。
理由は、行動は思考によって決定され、思考はその人の価値観や感情に左右されるからである。このように考えると、成果を取るために必要なものの多くは医学分野にあるのではなく、社会科学の分野にこそ存在していると感じるのである。
医療はもともと複雑系であることを考えれば、不思議ではないが、医療スタッフ以外の方が医療従事者に医学の専門的なことを持ち出されると、自分の考えを引いてしまいがちになるところこそ、私は「データヘルス計画(仮称)」実施の成否の分かれ目であると感じる。それ以降も一緒に仕事をしていかなければならない状況であれば、尚更である。
そんな時、他健保の事例も持ちながら、客観的にデータが見れるプロの外部業者を活用するのは有効である。
理由は
①データに基づいた客観的ロジック(医学的根拠を含む)を形成する 
②医療費削減までの成功事例を持っている 
③複雑系が扱える 
④ステークホルダーの利害関係に左右されない 
⑤プロとして成功を徹底追及(≒コミット)するから、である。
成功事例のプロセスはその健保に残り、ノウハウは肌で感じ取ることができる。
結果として、健保の中に次年度以降、同様のことができるスタッフが短期間で育つことも、大きなメリットであると思うのである。

文責:鈴木誠二

健康経営の指標は何か?


先日、「健康経営」に関するセミナーに参加した。
健保の保健事業を効果的・効率的に実践し、予防可能な加入者、なかんずく圧倒的に生活習慣病を発症しやすい45歳以上の男性従業員の生活習慣病関連疾患を抑制するには、事業主の理解と協力は不可欠である。
参加したセミナーの講演で紹介された企業においても、健保と人事と健康管理センターが毎月1回健康管理推進委員会を開催し、従業員の健康状態の何が問題なのか?誰が問題なのか?を明確にして、3者が連携して従業員の健康管理をしているそうである。特に各地区の産業保健推進者を工場長に担当してもらっているのは組織力学的に極めて効果的であると感じた。
最後の質疑応答では「経営トップの理解と協力を得るのに、従業員の健康度が高まると企業の経営にも良い影響が出る事をどのようなデータを使って説明しているのか?」との質問が出された。
これは、重要な視点である。
2004年、プレゼンティーズムの第一人者である米国のショーン・サリバンが来日し、東京のプレスセンターで講演を行った。講演後、真っ先に出された質問は「健康状態の改善によって生産性が高まることをどのような方法で証明し、経営陣にその有効性を説明したのか?」という、奇しくも先程と同じ内容であった。
ショーン・サリバンは一瞬間をおき、なぜそんなことを聞くんだという怪訝そうな顔をして「アンケート」とだけ答えたのが、今でも印象に残っている。
それまで微に入り細に入り米国人らしい数字を駆使したロジックで論を展開していたので、この結末にはそのギャップからも引き付けられ、「目から鱗」の思いであった。
昨今の医学的説明には「EBM(Evidence-Based-Medicine:客観的な医科学的根拠に基づいて決めよう)」が求められる。しかし、田中まゆみ医師が書いた「ハーバードの医師づくり」(医学書院)の中には「これは誰にも異存がない正論であるが、問題は、肝心の「医科学的証拠」が実に少ない、という現実にある。(中略)厳密にEBMを実行しようとするとそれに当てはまる治療報告は殆ど存在せず、たちまち立ち往生してしまう。」とある。
そして、この状況を打開するのは「OBM(Opinion-Based-Medicine:主観的・経験的・定性的な根拠に基づいて決める)である」と記している。同感である。
ショーン・サリバンもアンケートによるプレゼンティーズムスコアと不良品発生率・クレーム発生率・欠勤率・離職率等の相関性を取っているが、最後は単位時間当たりの個人およびチーム生産性を、個人とチーム長にアンケートで聞いている。すなわち、「あなたの(チームの)最も良い状態の生産性を100%としたとき、今月は何%だったと思いますか?そして、それはなぜですか?」との主観的・経験的・定性的情報を集めて、その相関性を求めるのである。
 
考えてみれば、仕事が手に付かない大きな不安や激しい歯痛を客観的・定量的数値で表すことはできない。生産性を低下させている要因は、本人が一番良くわかっているが、それは機械では測定不可能なものであると、私には思えてならない。サリバンの怪訝そうな顔を改めて思い出す。       

(文責:鈴木誠二)