アベノミクスの健康医療戦略「データヘルス計画(仮称)」発動!


アベノミクスの成長戦略が発表された。その第1番目に「国民の『健康寿命』の延伸』」が掲げられたのは、超高齢社会による「社会保障と税の一体改革」が待ったなしのところまできた証左であると考える。
一部の新聞によれば「レセプトや健診結果を分析し、一人ひとりに効果的な保健指導を行う『データヘルス計画(仮称)』の策定をすべての健康保険組合に義務付ける」とあった。
これは、我々が長年、健康保険組合に提示してきたことであり、すでに着手している健保も2~3存在する。しかし、多くの健保はその準備が全くと言って良いほどできていないのが現状である。このような時に「義務化」まで踏み込むのは余程の緊急性を感じているからではないだろうか。
これまで、健康医療戦略の多くは医師が中心となり、医療従事者以外の民間活力を活用することは少なかった。従って、どちらかといえば、医学をベースとした治療寄り発想であったように感じる。その結果が、現在の生活習慣病の多発とそれによる寝たきり高齢者の増加であると私は考える。
その良い例が「特定健診・保健指導」の実施数と成果であろう。一時期、病院側が危機感を持って医療施設でもこのサービスを積極的に行おうとした。しかし、①診療報酬上見合わないこと ②そのようなスタッフを育成するスキルを持っていなかったこと ③病院という対象者にとってはアウェイの環境下での指導が多かったがゆえに、自宅や職場という対象者のホームでの実生活のフォローに対する関心もノウハウも希薄であったことが、医療施設における特定健診・保健指導サービスの撤退を余儀なくさせたと考える。
このような背景を踏まえ、政府は「民間事業者が医療機関等と連携して行う運動指導などのルール整備」まで言及している。これからは医療従事者でなくとも、最新のそして正しい医療情報に基づいた服薬・食事・運動指導が求められる時代になることを予感させる発表である。こうした時代の流れから、一般の人々も正しい医療情報を持つようになるであろうし、インフォームドコンセントも成立する様になると考える。
2人に1人が罹患する癌もその治療法は多岐にわたり、その人の価値観や生き方とは切っても切れない関係にある。医師からのアドバイスをもらいながら、自分の価値観や生き方と照らし合わせてパワフルながん治療の選択をする、そんな時代に入ってきたと言えるかもしれない。
かつて日野原重明氏は講演の中で「医師は『人間を死から救う』事をミッションにしているが、その戦いは100%医師の負けである」と語っていた。死を治療することはできないのであるが、今の医療はそれに近いところまで行っていて、患者や家族もそれを求めているように思われてならない。
今こそ、死を忌み嫌いのではなく、死をどう受け入れるかを日本国民全員で考えなければならない時が来たと私は考える。人生の最終章のクライマックスを、病院ではなく自分が最も居たいと思う場所で、治すための治療ではなく最後の時間を味わうためのケアをパワフルに選択する行為は、人生を豊かにするだけでなく圧倒的な医療費の削減に貢献することを、私たち国民は認識しなければならないと考える。

文責:鈴木誠二