「発症予測と浮き釣り」


どこまでが健康でどこからが病気なのか?と問われたら、みなさんはどう答えるでしょうか?
「健康状態は波間に揺れる浮きのようなもの」と表現した人がいます。浮きが浮いていることを「生」とすると、小さな穴から海水が入って海底不深く沈んでいく状態は「死」と言えるかもしれません。
その生と死の間で揺れ動く状態は「体調が良い」「体調が悪い」になるでしょう。波や気圧の影響で若干水面により多くの部分が出ても、逆に水中により多くの部分が沈んだとしても、海水が入り込む状態になければ、最終的には落ち着くべきところに落ち着いて波間で揺れ続けます。
私たちはこの浮きに線を引き、線が水面より沈んだら魚が餌を持っていったと思い、水面より出たら餌が取られたと判断します。しかし、強風が吹いたり、潮の流れが早くなったりしても浮きは上下してしまいます。
素人には区別がつかない荒れた天候でも、毎日釣りをしている漁師には風や潮の流れで浮きが沈んだのか、魚が餌に食いついて沈んだのかは直ぐにわかるそうです。
何ミリ動いたかではなく、どのような状況でどんな動き方をしたかで判断しているようです。まさに暗黙知であり、匠の世界の話に聞こえます。
この話を、健康状態を健診データで判断する現代医学に置き換えて考えてみましょう。
健康診断では測定項目ごとに「基準値」があります。あたかも浮きに引かれる数本の線のようです。
基準値よりも高いか低いかで一喜一憂するのも、外的要因でその値が上下するのも浮き釣りに似ています。
そうすると、海中で魚が餌に食いついているかどうか(体内で何か病的な事が起こっているかどうか)は、その場の状況と動き方で判断するのがよさそうであることに気づきます。
医学は時に「サイエンス&アート」と称される事がありますが、その方が置かれている状況を総合的に判断し、データの動きから体内で何が起こっているのかを推定する発症予測は、まさに匠の世界の話であると感じます。
「体内で起こっていることを想像して、置かれている状況を加味しながらデータを動的に読む」は発症予測の基本かもしれません。
 

文責:株式会社ウェル・ビーイング 鈴木誠二