強い思いを持ってデータをみることで得られる幸運


学生時代、実験の結果をグラフにすると、ある現象が捕まえられた場合には、美しいと感じる曲線が得られ、そうでない時は規則性もなく、美しいとは感じられない線が現れる事を経験しました。
最近、医療費と健診データの分析ばかりしているので、研究をしていた学生の頃の感覚が蘇ってきます。
企業健保のデータと地方自治体のデータでは、描ける線が全く異なります。また、男性と女性でも大きく異なります。
それよりも私が驚いたのは、健診をしている人としていない人の線の違いです。
「成果は行動によって決定される。故に、行動なしは成果なし」という言葉を先輩から教えて頂きましたが、本当にその通りだと実感します。「健診をする」と「健診をしない」は典型的な行動のあり・なしの差です。健診の有無にあまり影響を受けないのは高血圧性疾患でした。これは、国保では性差の影響も少なく圧倒的に加齢の影響を受けますが、企業健保では対象年齢が若い方にシフトするので性差の影響を受けます。このように、様々なデータを片っ端からグラフにしていくと、グラフ化する前には想像もしなかったような現象が、美しい曲線として現れ、私に「ここが重要なポイントです」と教えてくれます。
「因果応報」が全てに通じるとは思いませんが、予防可能な病気の発症に関しては当てはまることが多いと感じます。なぜ、この人やこの集団は病気になって、こっちはならなかったのだろうか?考えながら数字を処理してグラフをいつくか作ると、「なるほど!」と驚く程美しい曲線となって現れてきます。
何かを一生懸命行なっている人は感性が鋭くなっているので、普段の何でもない現象が大きな発見であることに気づく幸運「セレンディピティ(serendipity)」を持つと言われます。雑菌(アオカビ)が混入したシャーレから世界中の人の命を救うことになるペニシリンの発見はその代表でしょう。
「病気になる人を何とか食い止めたい」「前期高齢者を病気にさせないようにしたい」「現役社員の死亡をゼロにしたい」この強い思いが健保における「セレンディピティ」をもたらすのではないかと確信し、今日も美しい曲線探しをしています。
ちなみに、市町村国保では糖尿病・虚血性心疾患・脳梗塞・透析の医療費は圧倒的に健診行為の影響を受けます。

(文責:鈴木誠二)