前期高齢者納付金を削減する


健康保険組合の健全経営を目的としたコンサルティングを行っていると、保険給付費と高齢者納付金が支出の殆どを占めることに気づきます。
特に前期高齢者納付金は前年の納付金額の影響を受けるので、アップダウンが著しく、健保の安定経営という観点からみると「悩みの種」になっているようです。

政府も、高齢者医療費を何で補填するのかに関しては「待ったなし」なので、「取れそうなところから取る」以外に方法がないのでしょう。
いずれにしても今後、保険者は夫々が知恵を出して自己防衛していく以外にないということなのかもしれません。

●前期高齢者の納付金は削減できるのか?

『削減できます』が私の結論です。

ただし、前提があります。
それは、「その前期高齢者はどのような人か?」が判断できる健診データ・レセデータ・問診結果・アンケート等の情報があるということです。

集め易いレセデータからハイリスク者を選定して訪問指導している業者もありますが、私は、これは本質的な前期高齢者支援ではないと考えていています。
私は徹底して健診データ・問診データ・アンケート(その方の生き方や価値観がわかるような)を実施し、この回収率を上げることから始めます。

どうすれば効率よく集められるかは工夫がいりますが、結果として私は約3カ月間で24%のデータ保有率を81%まで上げることができました。
このデータの中には「いつ、どのような方法であればコミュニケーションが取れるか」まで入っています。

これらのデータを解析すれば、放置をしておくと前期高齢者の医療費が増加し、それと連動して前期高齢者納付金も増加するハイリスク者が見えてきます。
この方々を中心に、医療費削減支援を行っています。
アウトカム評価は

①ハイリスク者の受診行動
②介入後の医療機関以外での健康行動
③レセプト
④支援に対する満足度

で評価していますが、概ね良好です。

●誰も病気になりたいと思っていない

私は現役社員の重症化予防支援を行っていた時、虚血性心疾患で入院した方々にインタビューを行ったことがあります。
毎年健診を受け、深夜勤務をしている方は年に2回も健診を受けているのに、虚血性心疾患のリスクに誰も気づかなかったのか?との疑問を持ったからです。

すると「健診の報告書に「*」がついていて注意を促すコメントが書いてあったけど、まさか、こんな風になるとは想像もしていなかった。
もしこのような顛末を知っていたなら、何故はっきり言ってくれなかったのかと憤りを感じる」とまで言われました。

この方以外にも「まさか、こんな風になるとは思わなかった、知らなかった」という意見が圧倒的多数を占めました。
そこから考えると、毎年健診を受けているにも関わらず、虚血性心疾患に至った最大の理由は「知らなかった・気づかなかった」ということではなかったかと考えるようになりました。

これを機に「医療従事者が伝えたい人に伝えたいことを伝えたいように伝える」ことができれば、生活習慣病関連疾患の多くは予防できると考えるようになりました。
誰も病気になりたいとは思っていないからです。

●行動なしは成果なし

医療従事者は、経験から、その方の複数年の健診データを基に、比較的正確にその方の健康状態の未来予測をすることができます。
そして、治療も含めたどのような健康行動を取れば発症確率を低下させることができるかも知っています。

しかし、そのことを本人に伝えても本人がその健康行動を起こさなければ、その方の未来予測も健康行動も全く意味を持たなくなります。
これは、どのような緻密なデータヘルス計画も、どのような丁寧な特定保健指導も、対象者が行動を起こさなければ、何もやらなかったのと同じということを意味しています。
特定保健指導は「健康習慣の獲得」を目標としていますが、6カ月間の型通りの介入では健康習慣の獲得までは至らないというのが私の結論です。
この結論は、約2万人の加入者を対象とした追跡調査の結果、介入直後には認められた健診データの差も、3年後の医療費・健診データでは介入の有無による差は認められなかった、という事実に基づいています。

成果を得るには徹底した健康行動管理が不可欠であることをこれらの結果は示唆していると、私は考えています。
これは年齢を問わず、前期高齢者にも当てはまると考えています。

●成果を得るための予防医療はその人の行動を決定する思考や感情にアプローチすること

私は起業してからの17年間、「どうすれば、誰もがWin-Win-Winとなる健康行動を人は取るのだろうか?」を考えてきました。

そして、その結論は『その人にとっての重要な願望をいの一番に扱う』ということでした。

次に重要なことは『それをリアルにイメージさせる会話をする』ということでした。

そして、最後の重要項目は『サポーターが継続した行動管理をしてあげる』事でした。

人は、自分や自分の愛する人々が得をする方法を覚えたならば、決してそれを手放すことはしないでしょう。
健康であり続ける健康管理法は、まさにその方法の1つではないかと私は考えます。

>>> 前期高齢者の納付金削減がうまくいかずに困っている健保があれば、相談に応じます。

2017年9月4日
株式会社ウェル・ビーイング 代表取締役 鈴木誠二